きっとこの景色をおぼえている

最初で最後のFCイベントになっちゃったな、と
始まる寸前にふと思った。
もっと早く出会いたかった、とか
もっとたくさん会いに行けばよかった、とか
後悔ができるのはきっとそれだけ好きだからで、
だからそれは悪いことではないと知っていて、
それでもやっぱり、本当はもっと、もっと、そればかりだ。

彼女の口から"卒業"の言葉を聞けば、
わたしの気持ちにもひとつ区切りがつくとばかり思っていた。
だけど彼女の声を聞いて、笑って話す姿を見て、
ただただわたしは好きの気持ちを募らせることしかできないまま、
あの発表の日よりも分からなくなってしまった。
本当に彼女がこの場所を去ってしまうのか、
本当にあと3ヶ月で彼女が「モーニング娘。加賀楓」ではなくなる日が来るのか、
そんなことばかりぐるぐると考えては答えが出ないまま次の日が来て、そうやって、いつの間にか3ヶ月は過ぎていくのだと思う。

涙で滲む視界にうつるのはかえでちゃんひとりで、
やっぱりあの軽やかで柔らかいのにぱきっとした踊り方がすきだ、
真っ直ぐで強いのにどこか甘い歌声がすきだ、
笑い声が、すらりと伸びる長い手足が、
挙げたらきりがないくらいぜんぶがすきだ。

本当に本当に綺麗だった、見る度に泣いてしまうくらい。

終演後に見たオレンジと灰色に霞む夕暮れも、
昼間の熱が嘘のような涼しい潮風も、
「かえでちゃんのことがだいすき」と話した横浜の道も、
観覧車が緑色に光る理由も、
きっと何年経っても忘れない記憶としてあの場所に存在し続ける。